うららかな一日。
土の匂いが風に乗ってやってきた。
家の裏手へ行ってみると、案の定、田んぼの土が掘り起こされていた。
ここでも春への準備が始まっている。
亀山郁夫著『ドストエフスキー 共苦する力』(東京外国語大学出版会、2009年)を読みながら、近いうちにまたドストエフスキーを読破してみようかなと思った。
ドストエフスキーを読むと、何か自分を見透かされているようで怖くなることがある。
と同時に、そんな自分を大きな心で包んで励ましてくれるような暖かみも感じる。
数年前、ある出来事がきっかけで『罪と罰』を久しぶりに読んだときもそうだった。
僕は怖くなり、そして最後に泣いた。
怖れと救われた気持ちの入り混じった涙だった。
ラスコーリニコフはソーニャに、「あなたがけがした大地に接吻しなさい」と言われ、最後の最後でそれを思い出して、言われたとおりにする。
大地にキスを。
ここには、亀山さんが書いているように、ロシアの土着の宗教的意義以上のものがあるように思う。
そこにすべてが包含され、そこからすべてが始まり、再生するような、そういう象徴としての大地。
大地にキスを。
その言葉と行為のなかに、ドストエフスキーが『罪と罰』で訴えたかったエッセンスがあるのだと思う。
大地、土。その感触と匂い。
それを忘れて、そこから離れて、自分というものを考えないようにしたい。
